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あらすじ
各話サブタイトル、スタッフ、キャスト(クレジット順)とかんたんなあらすじ(エピソードガイド)、そして蛇足な解説ありです。

第16回
第16回 影法師参上(かげぼうしさんじょう) >>年表
才蔵が京に戻り、数日が経つ。才蔵は大坂城に入城するという後藤又兵衛を送って鳥羽に来ていた。又兵衛や又兵衛を迎えに来た佐助は才蔵を大坂に誘うが、才蔵は断る。才蔵が半年あまりも旅に出ている間、京の町はすっかり変わってしまった。家康の上洛を待つ徳川家譜代の大名の士卒で町はあふれかえり、盗賊が横行し、町人は怯え暮らしていた。分銅屋菊千代が取り仕切り、耳次は給金アップをねだるがまったく聞いてもらえない。10月23日、家康は京都二条城に入城した。その頃大坂城内では、大野修理真田幸村後藤又兵衛らとこれからの戦略を話し合っていた。宇治、瀬田へ兵を出すべきとする幸村、又兵衛に対して、修理はかたくなに籠城を主張する。ならば平野口に出城を築かせてくれと幸村は申し出た。俊岳は幸村の出城の話を聞き、懸念を覚える。そしてお国の様子を獅子王院に尋ねた。獅子王院は、お国は才蔵に心を寄せているのではないかという。「間者としてそれはまずい」俊岳は憂いた。しかし獅子王院もまた、青子に想いを寄せていた。徳川軍の陣容は着々とまとまっていった。兵およそ20万、百近い大名の配置も決まり全軍が臨戦体制にあった。それに対して豊臣軍は兵およそ10万、それを指揮するものさえ決まっていない。修理はいまだ戦略も決められないばかりか、幸村が徳川に内応するのではないかと口するありさまだった。隠岐殿は幸村の出城・真田丸を訪れる。幸村の意気込みに触発されたように、隠岐殿は陰から大坂を支えるために動こうとする。才蔵は、今何をなすべきか模索していた。京の室町、妓楼・相州屋。才蔵はお国に導かれその座敷で隠岐殿に会する。隠岐殿は才蔵に江戸方の侍大将を斬るよう依頼する。佐助は徳川方の足下を脅かす戦略だと説くのだが、才蔵は辻斬りなど嫌だと突っぱねる。そして才蔵は真田丸を訪れた。こんな小さな出城で徳川軍を防げるのかと才蔵は聞く。幸村は城壁の小さな石を差し出し、才蔵にいう「ゴロタ石という。小さなものがその十倍もある大きなものを支えることがある」。京の町で徳川軍の侍大将が次々と殺され、そばに今様の短冊が残される事件が相次いだ。人々は徳川軍の内紛と噂した。影法師と呼ばれるその刺客を獅子王院は才蔵の仕業だとふむ。そして室町の相州屋が影法師の本拠地であることを突き止めた。獅子王院は侍に化けて一人相州屋に乗り込んでいく─。
【スタッフ】 原作:司馬遼太郎「風神の門」「城塞」/脚本:金子成人 /音楽:池辺晋一郎 /演奏:東京コンサーツ /監修:御正伸 /殺陣:國井正廣 /語り:長谷川勝彦アナウンサー /題字:藤沢昌子 /主題歌「時間差」/唄:クリスタルキング /作詞:阿里そのみ /作曲:池辺晋一郎 /制作:村上慧 /美術:富樫直人 /技術:白石健二 /効果:柏原宣一 /照明:宮本省二 /カメラ:曽我部宣明 /音声:永井孝夫 /記録:久松伊織 /演出:渡辺紘史
【出演】 霧隠才蔵:三浦浩一 /お国:小野みゆき /獅子王院:磯部勉 /青子:樋口可南子 /板倉勝重:寺田農 /東田市之介:辻萬長 /三好晴海入道:団しん也 /穴山小助:森川正太 /菊千代:小野ヤスシ /耳次:峰のぼる /梅ケ枝:亜湖 /桂木:岡本茉利 /信乃:政岡愛子 /猿飛佐助:渡辺篤史 /治作:稲葉義男 /後藤又兵衛:大木実 /鬼三:阿部希郎 /:野口貴史 /男:三遊亭旭生 /侍:木下秀雄,俵一,山根久幸,吉中六 /若駒 /早川プロ /大野修理:伊丹十三 /俊岳:佐藤慶 /隠岐殿:多岐川裕美 /真田幸村:竹脇無我
蛇足
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第17回
第17回 慶長地獄節(けいちょうじごくぶし) >>年表
影法師才蔵だと確信して、一人相州屋に乗り込んだ獅子王院は、相州屋に引き抜かれていた梅ケ枝に顔を見られ逃げ去る。周りを巻き込む危険を感じた才蔵は姿を隠し、見世物小屋へ用心棒として入り込んだ。佐助や相州屋の梅ヶ枝、桂木たちは影法師に乗して、洛中や江戸方の陣中で流言を撒き人心撹乱を謀る。獅子王院は青子に才蔵の行方を尋ねるが、青子も知ってはいなかった。青子は影法師が落とす短冊を示し「人を好いたことはあるか」と尋ねる。獅子王院は答えようがなかった。才蔵は同じ見世物小屋の若いかぶきもの4人組を役人の手から助ける。彼らはろくに働きもせず、ほしいままに振る舞い気ままに遊び呆けている。そんな輩が京の町には増えていた。そんな中、影法師は次々と徳川軍の侍を仕留めていく。佐助は洛中でニセ影法師に遭遇する。それは才蔵が助けたかぶきもの4人組の仕業だった。獅子王院は彼らに付け入り相州屋を探らせる。しかし相州屋で暴れる4人組は隠岐殿にたしなめられ、すっかり心を奪われてしまう。真田丸を訪れた佐助から報告を聞いた幸村はニセ影法師の出現を危惧する。そして真田丸では何者かの妨害によってその工事が遅れていた。佐助はあやしい人足を捕える。それは俊岳の手のものだった。隠岐殿は、真田丸の工事の妨害やニセ影法師を操る俊岳を斬ってほしいを才蔵に告げる。お国は危険を俊岳に伝える。俊岳は影法師の元締めである相州屋襲撃を板倉に進言する。板倉は隠岐殿と才蔵の生け捕りを命じた。獅子王院は分銅屋を襲い、人質を取って才蔵を生け捕りにした。そのまま相州屋に向かう。所司代の役人が相州屋を襲う。その頃佐助は、京を訪れた晴海入道とともに梅ヶ枝、桂木を相州屋から連れだし、夜通し遊びほうけていた。獅子王院は、隠岐殿を捕らえ、それを阻もうとしたかぶきもの4人組は殺されてしまう。
【スタッフ】 原作:司馬遼太郎「風神の門」「城塞」/脚本:金子成人 /音楽:池辺晋一郎 /演奏:東京コンサーツ /監修:御正伸 /邦楽指導:杵屋正邦 /殺陣:國井正廣 /語り:長谷川勝彦アナウンサー /茶道指導:西原暉子 /題字:藤沢昌子 /主題歌「時間差」/唄:クリスタルキング /作詞:阿里そのみ /作曲:池辺晋一郎 /制作:村上慧 /美術:宮井市太郎 /技術:三村三三郎 /効果:久保光男 /照明:高橋猛 /カメラ:飯田孟司 /音声:宮下謙佐 /記録:久松伊織 /演出:岡本憙侑 /演出:兼歳正英
【出演】 霧隠才蔵:三浦浩一 /お国:小野みゆき /獅子王院:磯部勉 /青子:樋口可南子 /板倉勝重:寺田農 /三好晴海:団しん也 /菊千代:小野ヤスシ /穴山小助:森川正太 /梅ケ枝:亜湖 /萩野:折原啓子 /桂木:岡本茉利 /中井主馬:冷泉公裕 /耳次:峰のぼる /信乃:政岡愛子 /猿飛佐助:渡辺篤史 /鬼三:阿部希郎 /:野口貴史 /茜丸:宮内真 /オロチ:見城貴信 /花小僧:中村幸路 /モヤ助:新里健士 /雑兵:梅津栄,佐藤輝昭,刀原章光 /欠伸女:十勝花子 /座長:及川ヒロオ /市木治三郎:村上幹夫 /人夫:金子正 /川村将監:大阪憲 /高沢平四郎:江藤三朗 /侍:姿鐡太郎 /少年:矢尾一樹 /少年:市山登 /少年:池田光隆 /若駒 /八星プロ /俊岳:佐藤慶 /隠岐殿:多岐川裕美 /真田幸村:竹脇無我
蛇足
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第18回
第18回 決戦前夜(けっせんぜんや) >>年表
才蔵佐助は、獅子王院に連れ去られた隠岐殿を捜すが、双ヶ岡黒屋敷にも京都所司代にもその姿を見つけることはできなかった。その頃、2代将軍秀忠が6万の兵を引き連れて京に入った。才蔵は「」を開き、伊賀者に隠岐殿捜索を依頼する。一方、お雪は、前のように贅沢な暮らしができないなら山に戻ろうと耳次にせがむ。伊賀者が動いていると知った獅子王院はこれにつけ込み、分銅屋の情報を流せとお雪と耳次をそそのかした。伊賀者の調べで、隠岐殿は藤堂家の宿陣、建仁寺に捕らわれていることがわかる。しかし建仁寺を守っているのは藤堂家の兵五百。相州屋で多くの仲間を失った佐助は伊賀者に助力を頼む。義理や命令では動かない伊賀者のために治作が礼金を用意するという。才蔵は「霞の陣」を仕掛け、敵の兵力を落としてから忍び込む計画を立てる。その頃、隠岐殿の捕らわれている建仁寺の牢に俊岳が現れた。両陣営の隠密工作の長を務めた2人は、それぞれの任務の終わりが近づいたことを感じていた。決行の日、建仁寺に忍び込んだ才蔵たちに隠岐殿処刑の知らせが入る。霞の陣の効き目を待っている時間はなかった。才蔵と佐助は今まさに溺死させられようとしている隠岐殿の牢に躍り込んだ。牢を出た3人を藤堂家の兵が囲む。万事休す。そこへ無数の手裏剣が藤堂家の兵を襲った。伏せておいた忍びたちの救援だった。そして霞の陣の効果が兵たちの動きを鈍らせはじめた。斬り込んでくる晴海お国たち。才蔵たちは無事隠岐殿を救い出すことに成功した。建仁寺の始末を聞いた俊岳は獅子王院に才蔵らの抹殺を命じる。四条大宮の法成寺跡。伊賀者たちが待つこの隠れ家に才蔵と菊千代は礼金を届けに向う。しかしあざみをはじめ、そこには集まっていた伊賀者たちは、何者かに皆殺しにされていた。そして悲しむ間もなく、追ってきた佐助から分銅屋が爆破されたと知らされる。駆けつけた才蔵たちに瓦礫の中から泣き声を聞こえた。火鉢の下に隠れていた信乃を助け出す才蔵たち。そして耳次が獅子王院に内通していたことを知った。京から、おそらく高野街道に向かう雪の山道を行く耳次とお雪。そこにやってくる才蔵と菊千代。お雪を庇い、精一杯悪ぶる耳次。才蔵の刀が一閃して耳次がのけぞる。のたうち回りながらも才蔵の腕の中で耳次は息を引き取った。才蔵をなじるお雪。この日、徳川軍10万が大坂に向かうべく京を発った。
【スタッフ】 原作:司馬遼太郎「風神の門」「城塞」/脚本:金子成人 /音楽:池辺晋一郎 /演奏:東京コンサーツ /監修:御正伸 /殺陣:岡本隆 /語り:長谷川勝彦アナウンサー /茶道指導:西原暉子 /題字:藤沢昌子 /主題歌「時間差」/唄:クリスタルキング /作詞:阿里そのみ /作曲:池辺晋一郎 /制作:村上慧 /美術:越智和夫 /技術:白石健二 /効果:浜口淳二 /照明:宮本省二 /カメラ:曽我部宣明 /音声:永井孝夫 /記録:久松伊織 /演出:小林平八郎
【出演】 霧隠才蔵:三浦浩一 /お国:小野みゆき /獅子王院:磯部勉 /青子:樋口可南子 /三好晴海:団しん也 /穴山小助:森川正太 /菊千代:小野ヤスシ /中井主馬:冷泉公裕 /耳次:峰のぼる /お雪:国谷扶美子 /信乃:政岡愛子 /梅ケ枝:亜湖 /桂木:岡本茉利 /あざみ:えりかわ恵子 /猿飛佐助:渡辺篤史 /治作:稲葉義男 /:野口貴史 /鬼三:阿部希郎 /つばめ:滝洸一郎 /:伊藤裕平 /梅若:山川修平 /兵卒:悟波好作,齋藤一夫 /役人:立沢雅人 /兵卒:島崎伸夫 /若駒 /鳳プロ /大納言晴季:岩井半四郎 /俊岳:佐藤慶 /隠岐殿:多岐川裕美 /真田幸村:竹脇無我
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第19回
第19回 大坂冬の陣(おおさかふゆのじん) >>年表
京、双ヶ岡黒屋敷。その茶室。お国は俊岳に別れを告げていた。既に大坂冬の陣は始まっていた。隠岐殿や佐助も京を離れ大坂城に入る。お国はそれについていくというのだ。「才蔵か」俊岳はいう。娘は愛する人のために父を捨てるのだ。父は何も言わず娘に茶を差し出し去った。差し出された茶の苦みが、涙を誘った。才蔵らは隠岐殿青子梅ケ枝らを足軽に化けさせて川舟で大坂に向かった。青子は大坂の堺屋に預けた。才蔵は真田丸に入り、そこが茶臼山の真正面であることを知り、幸村の大胆さに驚きをあらわにする。その茶臼山に陣を張った家康は、着々と戦の準備を進める一方、豊臣家に何度も和議を勧告し、さらに大坂城内にいる徳川への内応者たちに様々な和平工作を命じていた。秀頼直属の武将・青木民部もその一人だった。幸村は才蔵から、大筒20門が堺の商人から徳川方に近々運び込まれるという堺屋利兵衛の伝言を聞き、憂慮する。才蔵は佐助、お国らと図り、徳川方に運び込まれる大筒をまんまと奪い、あるいは破壊していった。そんな中、才蔵は少しずつお国を意識しはじめる。俊岳は獅子王院に幸村の監視を命じる。しかし板倉は幸村よりも堺の商人たちの動きを知りたいと言う。隠密工作が任務であった俊岳は近々任を解かれ、己の仕事もなくなるかもしれぬと恐れた獅子王院は板倉に仕えたいと願った。12月半ば、大坂城は20万の徳川軍に完全に包囲された。しかし徳川軍はいっこうに動こうとしなかった。仕掛けるなら今だという幸村に大野修理は出戦はならずという。ならば誘き出せばよいと幸村は言った。そういう幸村に答えて、才蔵と佐助は伊賀・甲賀の幻術を使い、徳川軍を翻弄する。誘き出された徳川軍2万は身の隠しようのない丘の上で真田丸の猛攻撃にあい、多くの死傷者を出し敗退した。この戦いによって、一躍真田丸と幸村の名が、敵味方を問わず高まった。大坂城では青木民部がこの勝利に乗じて和睦すべしと主張した。しかし幸村は和睦のために勝利したのではないと和議に反対する。徳川方はなお和議を求めてきた。板倉はいう、「次の戦の為の和議」であると。才蔵は堺屋の青子を訪ね、獅子王院と鉢合わせする。相い容れぬ2人は顔を背け罵りあう。青子は嘆く「戦さえなければ笑いあう仲にもなれように」。 12月16日、家康は大坂城を囲む各陣地に配置させた300にもおよぶ大筒を一斉に発射させた。その一発が大坂城の天守閣に命中した。驚き怯えた淀殿は和議を叫び、その一声で、大坂方の和議受け入れが決定した。才蔵は怒り、吼える「大坂のために死んでいった連中を、たった一発の砲弾で無駄にするのか! たった一発で!」
【スタッフ】 原作:司馬遼太郎「風神の門」「城塞」/脚本:金子成人 /音楽:池辺晋一郎 /演奏:東京コンサーツ /監修:御正伸 /殺陣:林邦史朗 /語り:長谷川勝彦アナウンサー /茶道指導:西原暉子 /題字:藤沢昌子 /主題歌「時間差」/唄:クリスタルキング /作詞:阿里そのみ /作曲:池辺晋一郎 /制作:村上慧 /美術:富樫直人 /技術:三村三三郎 /効果:柏原宣一 /照明:高橋猛 /カメラ:飯田孟司 /音声:宮下謙佐 /記録:久松伊織 /演出:渡辺紘史
【出演】 霧隠才蔵:三浦浩一 /お国:小野みゆき /獅子王院:磯部勉 /青子:樋口可南子 /明石掃部:竜崎勝 /板倉勝重:寺田農 /堺屋利兵衛:入川保則 /東田市之介:辻萬長 /三好晴海:団しん也 /穴山小助:森川正太 /菊千代:小野ヤスシ /青木民部:久世龍之介 /猿飛佐助:渡辺篤史 /治作:稲葉義男 /大蔵卿局:初井言榮 /後藤又兵衛:大木実 /梅ケ枝:亜湖 /桂木:岡本茉利 /信乃:政岡愛子 /鬼三:阿部希郎 /:野口貴史 /:伊藤裕平 /五島屋主人:松島彦次郎 /番頭:戸沢佑介 /若駒 /いろは /早川プロ /大野修理:伊丹十三 /俊岳:佐藤慶 /隠岐殿:多岐川裕美 /真田幸村:竹脇無我
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第20回
第20回 甲賀決死隊(こうがけっしたい) >>年表
大坂冬の陣は、大坂城天守閣に打ち込まれた一発の砲弾によって和議となる。己の気持ちが収まらない才蔵は、お国とともに冬空に陣を張る徳川軍に潜り込み、家康に意趣返しを画策する。真田丸には甲賀の里から佐助の援軍が到着した。戦える者はみな連れてきたという人々の中には、役立たずといわれる啄木頬白と、そのお婆の姿もあった。才蔵とお国は青子を訪ねる。青子は和議を喜び、正月のあれこれを楽しげに語った。そこへ信乃が現れた。堺屋利兵衛は、講和が決定的である今、閑古堂はもはや不要と判断し、治作を呼び戻したのだ。そんな中、幸村は佐助たちの諜報によって、徳川方が和議によって大坂城の濠を埋めようと画策していることを知る。幸村は急ぎ大野修理の元に参じるが、修理は既に和議受け入れの使者として発った後だった。家康は豊臣家の和議受け入れの申し出に対して、豊臣家の領地はそのままとし、徳川家に対しては異心を抱かぬことを約束させた。そして正式の和議調印は12月22日と決まった。同じ頃、堺屋は密かに作らせた鍬などを板倉勝重に届ける。そして大納言家の青子を渡す用意があると告げた。幸村は最後の賭けに出る。真田丸の8千の兵と甲賀衆で茶臼山を急襲し、和議の隙をついて家康を生け捕りにする計画を立てる。しかし修理はなにをばかなと激怒し、決して許しを出さなかった。出陣を待つ真田丸の兵たちは戦闘態勢を解かれる。しかし徳川方がすべての壕を埋める準備を進めていること知り、佐助は狼狽する。そして甲賀衆のみで襲撃を実行しようと決意する。夜闇に乗じて茶臼山の家康の陣に近づく佐助たち。しかしそこには、獅子王院の鉄砲隊が待ち受けていた。その頃、才蔵と菊千代は、細工砲弾を茶臼山に打ち込む準備を着々と進めていた。 そこへお国が佐助たちの襲撃を知らせにきた。才蔵が駆けつけた時には、獅子王院の鉄砲隊に狙い撃ちされ、甲賀衆は佐助を残して全滅していた。瀕死の佐助を抱えて脱出する才蔵。12月22日、大野修理ら豊臣方の使者が茶臼山に赴き、徳川家との和議が正式に調印された。そしてこの日、才蔵は密かに作った細工砲弾を、尾鷲村のフランキー砲を使ってまんまと家康の陣に打ち込むことに成功する。砲弾の中からは六文銭の旗印が飛び出し、茶臼山にひるがえった。同じ日、大坂城外濠の埋め立てが始まる。その埋め立ては、たった1日半で終わった。
【スタッフ】 原作:司馬遼太郎「風神の門」「城塞」/脚本:金子成人 /音楽:池辺晋一郎 /演奏:東京コンサーツ /監修:御正伸 /殺陣:國井正廣 /語り:長谷川勝彦アナウンサー /題字:藤沢昌子 /主題歌「時間差」/唄:クリスタルキング /作詞:阿里そのみ /作曲:池辺晋一郎 /制作:村上慧 /美術:宮井市太郎 /技術:白石健二 /効果:浜口淳二 /照明:宮本省二 /カメラ:曽我部宣明 /音声:永井孝夫 /記録:久松伊織 /演出:松岡孝治
【出演】 霧隠才蔵:三浦浩一 /お国:小野みゆき /獅子王院:磯部勉 /青子:樋口可南子 /板倉勝重:寺田農 /堺屋利兵衛:入川保則 /穴山小助:森川正太 /三好晴海:団しん也 /菊千代:小野ヤスシ /東田市之介:辻萬長 /梅ケ枝:亜湖 /桂木:岡本茉利 /信乃:政岡愛子 /猿飛佐助:渡辺篤史 /大蔵卿局:初井言榮 /老婆:千石規子 /治作:稲葉義男 /啄木:たこ八郎 /頬白:柄本明 /:野口貴史 /つばめ:滝洸一郎 /:伊藤裕平 /物頭:多田幸男 /甲賀者:柳田豊 /雲雀:加藤斉孝 /かささぎ:折尾哲郎 /甲賀者:田村保,車邦秀,南谷洋一 /神崎:山本武 /吉松:阿部六郎 /女:峯田智代,山崎優子 /若駒 /劇団いろは /八星プロ /大野修理:伊丹十三 /隠岐殿:多岐川裕美 /真田幸村:竹脇無我
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第21回
第21回 女忍者無情(くのいちむじょう) >>年表
12月22日、大野修理板倉勝重の手により豊臣と徳川の和議が正式に取り交わされた。その席で板倉は、大坂城の「総壕」を埋めてくれといい、修理は「外濠」だけならと承知する。しかし外濠どころか、二ノ丸の濠、および大野修理屋敷をはじめとする二ノ丸の建物いっさいまでが壊され始める。板倉は「総壕とは外壕にあらず、すべての壕のことなり」といい、あわてた修理は駿府の家康の元に向かった。堺屋利兵衛は徳川方に寝返り、青子獅子王院によっては須磨に連れ去られる。それを知った才蔵は激怒し堺屋に迫るが、利兵衛は「商いのできる相手を選んでなぜいかん。青姫とて儂には商いの品」といって動じない。治作は堺屋を離れる決心をし、信乃とともに大坂に小さな店を構えた。俊岳は、もはや潮時と知り板倉に隠居を願い出る。須磨に連れ去られた青子は、心を開き始めていた獅子王院の仕打ちに己の感情を御しきれず、高杯を投げつける。獅子王院は一寸も避けず、高杯はその額を打つ。才蔵は大坂で青子を見つけることができず、京に向かう。その頃、駿府から戻った修理は家康の謀略にはまり、壕のことも許し、牢人や武器も手放すと言い出していた。そして、幸村の元に兄・信之の使者が来る。田宮佐古四郎と名乗るその男は額に傷を持ち、家康の意向により幸村を徳川方に迎えたいと伝えた。幸村は使者を疑いながらも断固としてその申し出を断る。しかし獅子王院たちの大坂揺さぶりが始まり、大坂城内に幸村寝返りの噂が立ち、大野修理が城内で襲われる。刺客が使ったのは甲賀の十字手裏剣。修理は、幸村を誅すべしとささやく青木民部の意見に耳を傾け、これを正さんとした東田市之介は諫死してしまうのだった。お国は町で偶然獅子王院たちを見つける。そして獅子王院の額の傷を知り、幸村の元に現れた使者が獅子王院であったことを才蔵に知らせる。才蔵は「後ろで糸を引いているのはすべて俊岳だな」と怒りをあらわにする。そして伊賀者が俊岳の居所を突き止めた。京・知恩寺。急ぎ発つ才蔵に同行を求めるお国。しかし空き屋敷で支度をするお国は動けなくなる。才蔵はそんなお国を残し一人知恩寺に向かう。「久しいのう、俊岳殿」才蔵は俊岳の前に躍り出た。「青姫はどこだ」「知らん」2人は抜刀して対峙する。才蔵が刀を振り上げた瞬間、俊岳の前に立ちはだかる影。「俊岳は父」お国は叫んでいた。才蔵に衝撃が走る。必死に命乞いをするお国に才蔵は問う、「はじめから間者であったか」。うなずくお国に才蔵は後も聞かずに飛び去った。追うお国。2人は川辺にいた。お国に背を向ける才蔵。お国は問わず語りに己の生い立ちを語り始める。そして「才蔵が自分を変えたのだ」と告白する。いつの間にか才蔵は真っ直ぐにお国を見つめていた─。朝露に濡れる知恩寺。先祖の墓に手を合わせる俊岳。控えているお国。その後に才蔵の姿があった。才蔵に頭を下げる俊岳。返す才蔵。お国と才蔵は大坂城に戻った。知恩寺のことは、誰も知らない。青木民部は改めて牢人、武器を手放さないように修理に進言する。そして板倉勝重は、家康に「大坂に不穏な動きあり」と報告する。大坂夏の陣の火蓋が今まさに切られようとしていた。
【スタッフ】 原作:司馬遼太郎「風神の門」「城塞」/脚本:金子成人 /音楽:池辺晋一郎 /演奏:東京コンサーツ /監修:御正伸 /殺陣:國井正廣 /語り:長谷川勝彦アナウンサー /題字:藤沢昌子 /主題歌「時間差」/唄:クリスタルキング /作詞:阿里そのみ /作曲:池辺晋一郎 /制作:村上慧 /美術:越智和夫 /技術:三村三三郎 /効果:久保光男 /照明:高橋猛 /カメラ:飯田孟司 /音声:宮下謙佐 /記録:久松伊織 /演出:保科義久
【出演】 霧隠才蔵:三浦浩一 /お国:小野みゆき /獅子王院:磯部勉 /青子:樋口可南子 /三好晴海:団しん也 /穴山小助:森川正太 /東田市之介:辻萬長 /青木民部:久世龍之介 /猿飛佐助:渡辺篤史 /堺屋利兵衛:入川保則 /板倉勝重:寺田農 /菊千代:小野ヤスシ /中井主馬:冷泉公裕 /梅ケ枝:亜湖 /信乃:政岡愛子 /鬼三:阿部希郎 /:南雲佑介 /桂木:岡本茉利 /治作:稲葉義男 /大蔵卿局:初井言榮 /後藤又兵衛:大木実 /若駒 /鳳プロ /大野修理:伊丹十三 /俊岳:佐藤慶 /隠岐殿:多岐川裕美 /真田幸村:竹脇無我 /※お国の母:篠崎彩 /7歳のお国:堀越恵里子(クレジットなし)
蛇足
サブタイトルからするとお国が死んでしまうのかと思い、肝を冷やすのだが、そんなことはなかった。ハッピーエンドといえるかどうかわからないが、とりあえずほっと胸をなで下ろすラスト。
ストーリーは大坂夏の陣に向けて急展開していく。大坂城の濠が本丸を残してすべて埋められてしまい、さらに大坂城内に内部分裂を起こすための謀略が始まる。幸村への徳川寝返り工作、大野修理への偽刺客事件など、大坂方は腑甲斐ないことに振り回されっぱなし。なんといっても修理のバカ殿ぶりが全開。奸臣の言うことにコロコロ惑わされて、ついに東田市之介を自害に追い込んでしまう。これじゃ「女忍者無情」じゃなくて「市之介無情」だろと叫びたくなる。しかしこの修理のバカ殿ぶりは伊丹十三の名演技があってこそ。まったく哀惜の念に堪えない。そしてさらに青子誘拐。誘拐というか、堺屋利兵衛の商人的思考により獅子王院に引き渡されてしまったのだが、才蔵としては、これまで多くの知り人たちが獅子王院によって殺され傷つけられてきたために、もはや理性を失うほどに怒り狂う。 しかし、利兵衛のまったく悪びれない態度に、急に冷静になって「むやみに人は斬らん」が発動したのか、それとも同じ裏切り者でも、自らの命で罪を贖った耳次を斬った同じ刀で利兵衛を斬ること潔しとしなかったのか、才蔵は利兵衛を解き放つ。この辺大人になったというべきなのか。しかしこの「むやみに〜」ってやつは、けっこう便利に使われているような気がする。才蔵の気持ちに関係なく、物語的にまたは製作上殺したくない相手の時に発動するような気がするのは気のせいか。
そして当の青子は、須磨に連れ去られたことよりも、獅子王院に騙されていたことにショックを受けているようだ。深窓の姫君とはいいながらも青子も女である。獅子王院が自分を憎からず思っていることは薄々気がついていたはず。当初は警戒もしていたが、今ではすっかり信頼をおいていた。「だましたのか」。このたった一言に与えられた響きが、これまでのお前のすべての好意は偽りだったのか、という青子の絶望感を悲しいまでに物語っていた。そしてその絶望感は、蝋燭ひとつ灯された暗い部屋に置かれた青子となって具現する。
そしてこの青子の一件が、お国をも追いつめる。才蔵の青子探索は暗中模索。さらに幸村の元に現れた偽使者も獅子王院だったと知り、またもや才蔵の怒り爆発。知恩寺の俊岳を急襲する才蔵に無理矢理ついて行くわけだが、その時のお国の心情は、父を討つとまではいかなくても豊臣方の人間として父と対峙するつもりだったのか、それとも娘としてなんとか父を助けるためだったのか…。いざとなると身体がいうことを利かなくなるお国。その時の才蔵のやさしさが後の衝撃の大きさを物語る。そして捨身の告白。憎からず思い始めていた相手に実は騙されていたと知った才蔵の驚きは想像を絶する。才蔵は言葉もなくただ逃げ去るしかなかった。追わずにはいられないお国。許されないまでも己の心を知ってもらわない限り、それこそ生きてはいられないという思いだろう。お国は「すべての人を騙しているような気がして」という。 それは才蔵たち豊臣方に間者であることを隠していたことはもちろん、才蔵を想うことによって父や徳川方の人間をも、またその己に対して己の想いさえも偽ろうとしていたことを伺わせる言葉であり、彼女の深い苦悩が見える。そして「才蔵が己を変えた」という言葉が才蔵の心に触れる。才蔵がお国を変えたのだ、そして彼もお国によって変わったはず。お互いに影響しあい成長していった2人だったのだ。
そして知恩寺で独り座して朝を迎える父。何を想うのか。先祖の墓に現れた娘の後には、昨夜とは打って変わった表情の若者が控えていた。黙礼を交わす2人。娘は、父の元から飛び立った。同時に陰から陽の当たる場所へ。春の日差しと美しく咲いた春の花がふさわしい場所へ。
そして、青子のいる須磨でも、窓に春の花がこぼれている。ただ、青子の表情は暗い。お国と相対するように青子は陰に墜ちていくのか、ラストの才蔵の「ニパッ」はすべてが好転していくようにも感じるが。しかし次回タイトルは「幸村憤死」…。
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第22回
第22回 幸村憤死(ゆきむらふんし) >>年表
慶長20年春、才蔵はあいかわらず青子の行方を追っていた。お国はこれまでのこだわりを捨てさり、大坂城隠岐殿に仕えていた。そしてついに家康が豊臣家に対して大坂城の立ち退きと牢人の追放を要求してきた。大野修理は、城内で徳川方の要求について方策を話し合う軍議をもつが、そこに幸村又兵衛たち牢人の姿はなかった。その幸村は再戦が近いと見て、治作に武器弾薬の調達を頼む。そんな中、大坂では徳川方による牢人狩りが始める。須磨─。青子は獅子王院になぜ江戸方についたのかと尋ねる。獅子王院は出世したい、侍になりたいと答えた。そのためには大坂工作を成功させ、青子を上臈として江戸へ差し出さねばならない。その功によって、士分取り立てを考えようと板倉は獅子王院にいったのだ。青子は聞く「青子が江戸に下れば、そなたは侍になれるのか」。そして青子は江戸行きを決意する。しかし獅子王院の顔は悲しい色を映す。青子は責めるように問う「なぜわがままを許す。なぜつくそうとする」。獅子王院は「姫はまるで…」と言いかけ─。4月4日、将軍秀忠は密かに諸国の大名に大坂征討を命じ、18日には家康が二条城に入った。24日に淀殿の使いが和親を求めるが、家康はあくまで大坂城立ち退きを要求、それは豊臣家に対する事実上の宣戦布告であった。そして5月3日、家康は大和の国・法隆寺に陣を敷いた。ついに大野修理は牢人たちを収集し軍議を開く。そして後藤又兵衛の策が入れられる。才蔵は又兵衛の陣に招かれ、出陣前の又兵衛と茶を味わう。そこへお国から、修理が又兵衛の策を自分の建策として秀頼に報告したことを知らされる。その翌日未明、徳川軍が国境を越えてしまっているのを見た又兵衛は、独断で約3千の兵を率いて出陣し、徳川軍に猛然と突っ込んでいった。そして夜が明け、5月6日。援軍は間に合わず、後藤又兵衛は大坂の夏の野に果てた。幸村と明石掃部毛利勝永は秀頼の出陣を修理に取り付け、一気に家康の本営を攻める作戦を立てる。才蔵は明石軍に同行し、家康の首を狙う。決戦前夜、みなそれぞれに別れを惜しんでいた。獅子王院は青子に数日うちに京に戻ると告げ、青子は引き戸の影の獅子王院に問いかける「私のことを『まるで…』と言いかけた、その先を」と。獅子王院のいらえに青子は、ただ一つの願いを口にした。「私を海につれていっておくれ」。5月7日、最終決戦の火蓋は切って落とされた。幸村は徳川方の真只中と突っ切って家康の本営を襲った。その凄まじさは、家康をはじめ側近の武将たちが本営を逃げだすほどであった。幸村は佐助を大坂城に返し、秀頼の出馬を嘆願させる。しかし秀頼出馬はかなわず、その間に体制を整えた徳川軍が圧倒的な兵力で反撃を始めた。そして毛利軍が退却、幸村も押されはじめる。 秀頼出馬の合図を待って出遅れた明石軍は、時既に遅く、もはや家康に近づくことはできないとみて敗走を決める。才蔵は幸村を追って、佐助と茶臼山の北へ急行した。しかし、幸村は側近をことごとく失い、安居天神で首のない躯となっていた。不遇の名将はここに、49年の生涯を閉じた。
【スタッフ】 原作:司馬遼太郎「風神の門」「城塞」/脚本:金子成人 /音楽:池辺晋一郎 /演奏:東京コンサーツ /監修:御正伸 /殺陣:岡本隆 /語り:長谷川勝彦アナウンサー /茶道指導:西原暉子 /題字:藤沢昌子 /主題歌「時間差」/唄:クリスタルキング /作詞:阿里そのみ /作曲:池辺晋一郎 /制作:村上慧 /美術:越智和夫 /技術:白石健二 /効果:柏原宣一 /照明:宮本省二 /カメラ:曽我部宣明 /音声:永井孝夫 /記録:久松伊織 /演出:渡辺紘史
【出演】 霧隠才蔵:三浦浩一 /お国:小野みゆき /獅子王院:磯部勉 /青子:樋口可南子 /三好晴海:団しん也 /穴山小助:森川正太 /明石掃部:竜崎勝 /青木民部:久世龍之介 /猿飛佐助:渡辺篤史 /板倉勝重:寺田農 /菊千代:小野ヤスシ /中井主馬:冷泉公裕 /梅ケ枝:亜湖 /桂木:岡本茉利 /信乃:政岡愛子 /西尾久作:宇南山宏 /:南雲佑介 /鬼三:阿部希郎 /伝令:北川耕太郎,山崎之也 /ダンゴ屋:久遠利三 /商人:庄司肇 /治作:稲葉義男 /大蔵卿局:初井言榮 /後藤又兵衛:大木実 /若駒 /ひまわり /早川プロ /大野修理:伊丹十三 /隠岐殿:多岐川裕美 /真田幸村:竹脇無我
蛇足
前回が才蔵とお国のラストへの布石のストーリーとするなら、今回は青子と獅子王院のストーリー。但しサブタイトルは「幸村憤死」なので、表のストーリーは幸村をはじめとする武将たちの最期の生き様であり、青子と獅子王院は裏ストーリーということになるが。
青子はなぜ江戸行きを決意したのか。獅子王院を傷つけたからというわけではあるまい。彼の献身的な愛に絆されたのか。ノブレスオブリージュに目覚めたのか。獅子王院の生い立ちが青子に生きていくことの厳しさ、哀しさを教える。時代が、いつか夫を得て、幸せにつつまれて暮らす未来だけを夢見ていた青子を、獅子王院という闇に出会わせ、公家の姫としての成長を促したのかもしれない。そして獅子王院は、なぜ青子の江戸行きを貫いたのか。彼は少しも青子を江戸へなど行かせたくなかったはずなのに。青子を連れて逃げることによって逆に青子を不幸にしてしまうことを恐れたのか。それとも、彼の中の闇の深さか。いつも飢えていた子供時代。死んでしまった妹。出世のため生きるために犯してきた行為─。青子の愛も彼をそこから引き上げることはできなかったのか…。獅子王院が求めたのは幸せな花園。青子が求めたのは広い海。彼らはお互いの想いを言葉にするが、それはすでに時代に抗う力は持っていなかった。「海へつれていっておくれ」─それは2人の出会いの言葉だった。青子はもう一度そこからやり直したかったのかもしれない。しかし、すでに海も花園も彼らからいちばん遠いところにいってしまっていた。あまりにも悲しい出会いをしてしまった2人だったのだ。
そんな悲しい2人を飲み込んだ風雲は今また、大坂城を飲み込もうとしていた。一騎当千の名将たちが大坂にはいた。しかし大坂方首脳陣は彼らを生かす術を持たなかった。己の策が採用された又兵衛は、嬉しそうに才蔵とお国を招いて茶を振る舞う。そしてまるで息子をからかうように才蔵とお国を祝福する。しかし修理の小賢しい保身によって手柄を横取りされたと知った又兵衛は、独断先行して果ててしまう。才蔵は怒りを爆発させる。幸村とてそれは同じ気持ちのはず。しかし感情を表に出さない幸村は、盟友を失い、ひとり部屋で爪を切る。それを障子の影から見た才蔵は、幸村の佇まいからすっかり生気が消えてしまっているのを感じたのかもしれない。この人のためにもう一度働きたい、才蔵はそう思ったのだろう。
決戦前夜、それぞれが大切な人との時間を過ごす。佐助の淋しそうな表情を必死にうち消そうとして笑う梅ヶ枝。才蔵を問いつめるお国にごにょごにょ言って逃げ腰の才蔵が笑える。明日家康の命を狙う才蔵には今言葉を残すことはできないのだろう。そして絶妙なタイミングで佐助が現れる。屋根の上に寝ころぶ2人。BGMが「お国」のテーマから「時間差」インストゥルメンタルに変わる。かつて、幸村暗殺行の前に大坂の町家の屋根に上った時は敵同士だった。今はともに戦う友となった2人。佐助の涙は、この最期の時に最高の友を得たうれしさか、悲しさか。幸村と隠岐殿もまた往時の桜を思い出していた。
そして男たちは最後の決戦に臨む。天王寺口の戦い。幸村たちは何度も家康を脅かす。過去に2度(神川合戦、上田合戦)、そして真田丸の攻防において徳川に手ひどい敗戦を味あわせた真田の攻撃は家康を心底震え上がらせた。しかし時代の勢いはすでに徳川にあった。あと一歩ということろで幸村は家康を追いつめられなかった。かつて、自分がどれだけ働けるが試したい、己が生きた証を残したいと云った幸村は安居天神で果てる。彼の生きた証は後世に残った。今、彼は満足しているのだろうか。
劇中、天王寺口の戦いで、幸村が佐助を大坂城に返す場面がある。史実では、嫡子・大助を戻し、秀頼の出馬を願っている。しかしやはり秀頼の出馬はならず、大助は秀頼とともに自害したと云われている。しかし、鹿児島には「幸村は合戦で死なず、山伏に化けて秀頼・重成を伴って谷山(鹿児島市)に逃げた」という逸話があり、九州を中心に各地にさまざまな幸村生存説が残っている。一般に、幸村は安居神社で討たれたと言われているが、これは明治時代に旧帝国陸軍参謀本部が制定したものとされており、安居神社にある「眞田幸村戦死跡之碑」には、戦死の地の選定に関しての参謀本部の関与を示す一文が刻まれている。また幸村には多くの影武者がいたとされており、徳川方の真田勢による幸村の首実検でも確証は得れれていないようだ。
幸村の子女たちだが、幸村は大助以下の子女を徳川方の片倉小十郎重綱(伊達政宗の側近)に託している。子らは無事生き延び、娘・阿梅は重綱の妻となり、幸村の子孫を後に残した。
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最終回
最終回 戦士の出発(せんしのたびだち) >>年表
慶長20年5月7日、徳川軍15万の兵が大坂城を完全に包囲した。才蔵は大坂城に潜入、糒蔵に向かった。そこには秀頼淀殿を守って大野修理隠岐殿らとともに佐助お国がいた。才蔵はお国に城を出るように言う。しかしお国は聞き入れない。才蔵は「治作殿の家にいる、必ず来い」と言い、立ち去った。獅子王院青子を連れて須磨を発った。早朝の須磨の浦に青子のはしゃぐ声が響く。しかしその声はやがて涙に変わっていた。「獅子殿、立派な侍におなり」。青子はそっと獅子王院に手を差し出した。秀頼と淀殿の助命嘆願交渉は決裂し、大坂城に火がかかる。徳川軍が突撃を開始した。才蔵は大坂城に走る。その頃、大坂城・糒蔵では秀頼らが最後の時を迎えていた。「覚悟せよ」という修理に、隠岐殿は「戦って死にたい」と願い出、糒蔵を出る。隠岐殿は佐助とお国に城を出るようにというが、2人は首肯しない。佐助は忍び刀をお国に預け「才蔵に友情の証しとしての形見を渡してほしい」といい、隠岐殿と2人天守閣に向かった。2人を追うお国。才蔵は徳川兵と斬り結びながら城の奥へと進む。至る所に火がかかり徳川兵が押し寄せる。ついに隠岐殿は敵の刃に倒れてしまう。佐助は隠岐殿を奥の部屋に隠しながら敵を退ける。才蔵とお国は満身創痍の佐助を見つけた。「佐助!」才蔵は叫ぶ。佐助は無二の友の姿を見つけ、最期の笑顔を見せた。その手には爆薬が握られている。「才蔵!さらば」─。大坂城は墜ちた。それは同時に太閤秀吉が一代で築き上げた豊臣家の終焉でもあった。朝靄の中、死んでいった者たちのために石が積まれていた。戦さは終わった。しかし才蔵にはやり残したことがあった。京・大納言晴季の屋敷。静かな寝息を立てる青子の部屋の庭先に、才蔵と獅子王院はいた。両者の刀が閃く。そこへ青子が飛び込んだ。獅子王院を庇い、才蔵に刀を退けと懇願する。青子は江戸に行く決心をしていた。それは才蔵にも覆せない固い決心だった。もはや才蔵にできることは何もなかった。治作の店に生き残った人々が集まり、これからの門出を祝った。そして才蔵はお国と八瀬に向かった。獅子王院は板倉に今後も仕えることを願うが、板倉の返事は獅子王院を凍らせた。「お主の用は済んだ。もはや不要である」。そして、青子は参内し、江戸行きが決まる。八瀬─。そこは才蔵とお国が初めて出会った宿だった。あれから2年半が過ぎていた。あの頃才蔵は、風雲に乗して天下に躍り出、その手になにか大きなものをつかもうとしていた。そしてこの2年半、才蔵はがむしゃらに生きた。そして得たものがあった。「妻にならんか」。才蔵はかけがえのないものを手に入れた。5月末、江戸城大奥に上臈として入る青子の行列が、京の都を去っていこうといていた。道端に伏す見覚えのある姿。青子は籠を止めさせた。いつも青子を守り慈しんでくれた者の姿だった。「花を摘んでおくれ」。差し出された野の花ごしに青子はささやく、「りっぱな侍になりますように」…。籠は青子と京の野の花を乗せて小さくなっていく。獅子王院にはそれはまるで、深い海の底に消えていくようであった。才蔵とお国は夏の光の中にいた。2人の中には戦に破れた敗北感はなかった。安らぎと満足感があった。風神の門に入り、そこで出逢った多くの人たちの面影を胸に、今2人はその門を出ようとしていた─。
【スタッフ】 原作:司馬遼太郎「風神の門」「城塞」/脚本:金子成人 /音楽:池辺晋一郎 /演奏:東京コンサーツ /監修:御正伸 /殺陣:國井正廣 /語り:長谷川勝彦アナウンサー /題字:藤沢昌子 /主題歌「時間差」/唄:クリスタルキング /作詞:阿里そのみ /作曲:池辺晋一郎 /制作:村上慧 /美術:宮井市太郎 /技術:三村三三郎 /効果:浜口淳二 /効果:久保光男 /照明:高橋猛 /カメラ:飯田孟司 /音声:宮下謙佐 /記録:久松伊織 /演出:小林平八郎
【出演】 霧隠才蔵:三浦浩一 /お国:小野みゆき /獅子王院:磯部勉 /青子:樋口可南子 /板倉勝重:寺田農 /菊千代:小野ヤスシ /梅ケ枝:亜湖 /桂木:岡本茉利 /猿飛佐助:渡辺篤史 /治作:稲葉義男 /大蔵卿局:初井言榮 /中井主馬:冷泉公裕 /信乃:政岡愛子 /組頭:田辺進三 /侍:島村卓志,柿沢邦彦,小倉馨 /兵卒:井上鉄男,吉田太門,赤崎ひかる /若駒 /いろは /八星プロ /耳次:峰のぼる /あざみ:えりかわ恵子 /お雪:国谷扶美子 /後藤又兵衛:大木実 /三好晴海:団しん也 /穴山小助:森川正太 /俊岳:佐藤慶 /真田幸村:竹脇無我 /孫八:北見治一 /大野修理:伊丹十三 /大納言晴季:岩井半四郎 /隠岐殿:多岐川裕美
蛇足


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